厚生局の個別指導、監査

保険医療機関等(医科、歯科、薬局、柔整)への指導監査の情報提供をします。

厚生局の保険医療機関への個別指導の実例(医科)

保険医療機関への指導監査を理解するためには、取消処分となったケースについて知ることが重要です。実例を知ることで、手続きの背景や意図などが推測できることがあります。

以上の見地から、実際に個別指導から監査となり、取消処分となった医科の医院、診療所の実例を3つご紹介します。

 

1 検査結果を廃棄したと弁解した取消しの実例

以下の事例について、簡単にご紹介、コメントをします。

 不正請求の患者の情報提供(通報):厚生局の個別指導

 

この事例は、近畿厚生局の処分です。

個別指導にのきっかけは、子供の患者の母親からの、厚生局に対する、受けた記憶がない処置、手術、検査が請求されているとの情報提供です。子供だから情報提供はないだろうと考える医師がいらっしゃるかもしれませんが、親は、むしろ、子供のために、より慎重に診察を観察しており、違和感があれば、子供のために、力を尽くす傾向があるかもしれません。たとえ、公費負担があり一部負担金の額が一定であるなどしたとしても、付け増し請求を行えば、厚生局に通報されることがあります。

厚生局は、上記の情報提供を受け、個別指導を実施したところ、検査結果などの持参が医院からありませんでした。医師は、廃棄したためと弁解しましたが、厚生局としてはそうではないだろうと、個別指導が中断されました。回顧的に検討すると、この時点で不適切な診療を認め謝罪していれば、場合によっては、監査とはせず、再指導で様子を見てくれたかもしれません。

その後、個別指導を再開し、不自然な点を改めて指摘し、医師が不正請求を認めることになりました。その後、監査に移行し、振替請求と付増請求の不正請求の事実が確認され、取消処分となりました。不正請求の金額としては、126万2366円ですが、この他にも、不正請求したものを自己点検し、自主返還が求められます。

 

2 死亡患者の診療報酬の不正請求での取消しの実例

以下の事例について、簡単にご紹介、コメントをします。

 死亡した患者の診療報酬不正請求:厚生局の個別指導

 

近畿厚生局の事例です。タイトルが示すとおりの内容となっています。いわゆる架空請求が疑われる場合、厚生局は厳しく対応してくる印象です。

 

市から、情報提供に基づきレセプトを点検した結果、死亡している患者について、その後も毎月、診療報酬が請求されているとの情報提供が、近畿厚生局に対しありました。死亡患者のレセプト請求は、死亡した直後であれば手違いなどあり得るかもしれませんが、このようなケースの場合は、その医院について、少なくとも不適切な状況が継続していることが窺われます。死亡した患者を診療することはできませんから、不正請求の言い逃れが困難な類型といえます(不正請求に、意図的であること、すなわち故意性は要求されていません。)。

個別指導が実施され、不自然な点が見受けられたため中断となり、指導が再開され、医師が、架空請求を認めたことから、監査に移行しました。架空請求のレベルになってしまうと、悪質性が高いと判断され、個別指導の当初の段階から医師が不適切な診療報酬請求を認め謝罪したとしても、監査になってしまっていた可能性が十分あろうかと思われます。

監査で架空請求及び付増請求を認定され、取消処分(取消相当)となり、75万0824円の不正請求金額が認定されています。

 

3 接骨院との不正請求での取消しの実例

以下の事例について、簡単にご紹介、コメントをします。

 医院の鍼灸院・接骨院との不正請求:厚生局の個別指導

 

近畿厚生局の事例であり、医師の医院が接骨院と連携して結託して不正を行い取消しとなった実例です。

近畿厚生局に、接骨院鍼灸施術所において診療行為を行っていることや、受診していない医療機関で受診したことになっている旨の情報提供がありました。また、受診した日数も水増しされているとの情報提供もありました。

そんな中、新聞で、上記の問題を指摘する報道がありました。厚生局は、報道がなされたり刑事事件化したりすると、重点的に対応する傾向があります。厚生局は、当該医療機関について個別指導を実施し、中断、再開の後に、監査に移行しました。回顧的に考えると、監査への移行ありきの、監査を前提とした個別指導の実施だったのかもしれません。

監査の結果、架空請求、付増請求などの不正請求が確認され、取消処分に至りました。監査で確認された不正請求の金額は、58万6520円です。

なお、医療機関のみならず、柔道整復師の施術所(接骨院整骨院)についても、医療機関へのものと異なる部分もあるのですが、厚生局の個別指導、監査の仕組みがあります。当該仕組みついては、以下のページの一群のコラムが参考になります。

 整骨院、接骨院への厚生局の個別指導と監査 

 

柔道整復師への個別指導・監査と医療機関への個別指導・監査の仕組みで、同様の点と違う点を知ると、厚生局の指導監査のより深い理解に繋がるかもしれません。