厚生局の個別指導、監査

保険医療機関等(医科、歯科、薬局、柔整)への指導監査の情報提供をします。

整骨院の個別指導、監査の実例

前回は、薬局、薬剤師への個別指導と監査、取消の実例について説明しました。今回は、薬局薬剤師ではなく柔道整復師(柔整師)、すなわち整骨院接骨院への、療養費の請求に係る個別指導、監査、中止の実例を2つ紹介します。

なお、柔道整復師の不正請求の問題については、厚生局による個別指導、監査の枠組みに加え、刑事事件での保険金詐欺の処罰の枠組みもあります。

整骨院接骨院への個別指導の今回の2つ以外の実例については、柔道整復師への個別指導、監査(厚生局)の末尾の一連のコラムが参考になります。

 

1 整骨院の不正請求、定額料金でのマッサージ

厚生労働省九州厚生局の公表資料によれば、整骨院が個別指導に至った経緯、監査に至った経緯は以下のとおりです。ポイントは、不正請求となる偽った負傷名を診療録に恒常的に記載して、定額でマッサージを行っていた点です。私見では、施術費用を施術内容にかかわらず定額としている整骨院接骨院が散見されますが、療養費の支給基準に反している場合がありますので、注意する必要があります。

1 九州厚生局への不正請求の情報提供
九州厚生局に、整骨院について、100円(定額)であんまを行っている、また、その他にも、不正をいろいろ行っている、との情報提供がありました。さらに、その後も、同様の情報提供が寄せられました。

2 一律の一部負担金徴収 
厚生局が、患者調査を実施したところ、負傷名(症状)について、支給申請書の記載内容と患者からの回答とに相違がみられました。具体的には、慢性的な肩こり、腰痛等に対する施術であると疑われたものが多数見受けられました。また、一部負担金の徴収額が一律(300円または100円)であるとの回答がほとんどでした。

3 単なる肩こりへのマッサージの療養費の請求
整骨院の施術所に対し個別指導を実施したところ、負傷原因と負傷部位について、施術録の記載内容と患者調査の結果とが相違している例が多数確認されました。そして、本来、療養費の支給対象とはならない、単なる肩こり等へのマッサージであるものを、療養費の支給対象となるよう偽った負傷名や負傷原因を付したうえで療養費の請求を行い、さらに、月々で負傷部位を変えながら初検料を算定していることが強く疑われました。そこで、個別指導を中断しました。

4 個別指導の中止、監査への移行
施術内容や療養費の不正請求等の疑義について事実関係を確認するため、中断中の個別指導を中止する旨を通知しました。そして、監査に移行しました。

 

監査の結果、実際には療養費の支給対象となる負傷ではないにもかかわらず、療養費の支給対象となるよう偽った負傷名や負傷原因を付して施術録に記載し、当該負傷に関し施術を行ったとして療養費を不正に請求していた事実が確認され、この整骨院柔道整復師は、受領委任の取扱いの中止となりました。

  

この中止の事例の詳細は、整骨院、接骨院の不正請求、100円のあんまのコラムが参考になります。

 

2 部位転がしでの不正請求

厚生労働省九州厚生局の公表資料によれば、整骨院柔道整復師について、個別指導を経ずに監査に至った経緯は以下のとおりです。ポイントは、無資格者施術について、警察が動きマスコミ報道がなされた事案であり、そのため、レセプトを点検の上で直ちに、個別指導を経ずに監査が実施されたという点です。また、受領委任の中止相当の理由について、無資格者施術に加え、部位転がしの不正請求が挙げられている点もポイントです。

1 整骨院柔道整復師逮捕の報道
柔道整復師の免許がないにもかかわらず、有資格者が施術を行ったように装い、患者が加入する社会保険から2万6千円をだまし取ったとして、整骨院の開設者が柔道整復師法違反と詐欺の疑いで、また、当時の施術管理者が詐欺の疑いで、警察に逮捕されたとの報道がなされました。

2 不正請求(部位転がし)での監査の実施
保険者から支給申請書の写しを取り寄せ点検した結果、複数の患者について、数か月おきに負傷部位が変わり、負傷と治癒を繰り返す施術、いわゆる「部位転がし」により長期間にわたり不適切な療養費の請求を繰り返していることが確認されました。そこで、厚生局は、個別指導を経ずに、監査の実施に踏み切りました。

 

監査の結果、無資格者施術(柔道整復師の資格を有しない者が行った施術について、療養費を不正に請求していました。)、いわゆる部位転がしの不正請求(実際には療養費の支給対象となる負傷ではないにもかかわらず、療養費の支給対象となるよう偽った負傷名や負傷原因を施術録に記載(入力を含む。)し、当該負傷に関し施術を行ったとして療養費を不正に請求していました。)、施術書類の保存義務違反(受領委任の取扱いを行っていた期間の施術に関する帳簿及び書類を保存していませんでした。)の事実が確認され、この整骨院柔道整復師は、受領委任の取扱いの中止相当となりました。