厚生局の個別指導、監査

保険医療機関等(医科、歯科、薬局、柔整)への指導監査の情報提供をします。

保険医療機関(医科)の取消の実例

前回は、薬局・薬剤師への個別指導・監査の対応などについて説明をしました。

今回は、実際に個別指導から監査となり、取消処分となった医科の保険医療機関である医院、診療所の実例を2つご紹介します。

保険医療機関の指定の取消事例については、その地域の厚生局のホームページで(一定期間)公表されています。

 

1 後発医薬品を先発医薬品とした取消しの実例

厚生労働省近畿厚生局の公表資料によれば、監査に至る経緯は以下のとおりです。ポイントは、初回の個別指導で診療録の持参が不十分であったことと、再開後の個別指導で、後発医薬品の先発医薬品への振り替えを認めたことと思われます。

1 匿名の者からの情報提供
匿名の者から、厚生局の指導監査課に対し、以下の情報提供がありました。
①薬剤情報の文書を提供していないにもかかわらず、薬剤情報提供料を請求している
②定期的に薬のみ受け取りにくる患者に診察せずに調剤し、再診料等を請求している
③実際には月1回の診療で28日分の調剤をしているにもかかわらず、月2回の診療とし、14日分ずつ調剤したものとして再診料等を請求している
④実際に受診した患者に、患者の知人の薬剤も合わせて調剤のうえ手渡したにもかかわらず、知人を診察したものとして再診料等を請求している

2 個別指導の実施と個別指導の中断
以上の情報提供に基づき個別指導を実施しました。すると、指導対象患者の診療録の一部について持参がなく、また、医薬品の納品伝票又は請求書から購入実績が確認できない医薬品について、医師から明確な回答が得られませんでした。そこで、個別指導の中断となりました。

3 個別指導の再開と監査への移行
個別指導を再開し尋ねたところ、医師が後発医薬品を先発医薬品に振り替えて診療報酬を不正に請求していたことを認めました。そこで、個別指導が中止となり、監査に移行しました。

 

監査の結果、架空請求、付増請求、振替請求、二重請求の事実、そして、診察をせずに調剤し、診療報酬を不正に請求していた事実が確認され、この医師は、保険医の取消処分となりました。

 

この取消事例の詳細は、厚生局の個別指導(不正請求の情報提供)のコラムが参考になります。

 

2 個別指導の中断、中止の上での監査、取消しの実例

厚生労働省近畿厚生局の公表資料によれば、監査に至る経緯は以下のとおりです。このケースも、上記1の事例と同様に、匿名の者からの情報提供を端緒とし、個別指導が実施されています。ポイントは、初回の個別指導での持参物について書類間の矛盾・齟齬が散見されたことと、不正請求と判断されるべき不適切な保険診療を認めたことと思われます。

1 一部負担金の徴収漏れなどの情報提供
匿名の者から、厚生局の指導監査課に対し、以下の情報提供がありました。
①当該医療機関は患家に訪問していないにもかかわらず、在宅患者訪問診療料を請求している
②月に1回しか訪問診療をしていない患者に2回訪問診療したものとして、在宅時医学総合管理料を請求している
③看護師が薬を患家に届けただけで訪問診療料を請求している
④患者から一部負担金を全額徴収していない

2 不適切な保険診療の自認
個別指導を実施したところ、以下の理由から、個別指導の中断となりました。
①診療録に記載された診療日数より診療報酬明細書の請求日数が多い事例が散見されたこと
②出勤簿に医師の押印がないにもかかわらず診療録には診療の記録が記載されていた事例が散見されたこと
③処方せんを従業員が特定の薬局に持ち込んでおり、調剤された薬剤を診療所から患家に持参していた旨の申述があったこと
④一部負担金は3,000円の定額を徴収している旨の申述があったこと

3 個別指導の再開後の再度の自認と監査への移行
個別指導を再開したところ、開設者が、医師が診療を行っていないにもかかわらず診療報酬を請求したこと、処方せんを患者に交付せず看護師が薬局に持ち込み受け取った薬剤を患家に持参した場合でも在宅患者訪問診療料を請求していたことを認めました。その結果、診療報酬を不正に請求していることが濃厚となったため、個別指導が中止され、監査に移行しました。

 

監査の結果、付増請求の事実が確認され、この医師は、保険医療機関の取消相当となりました。